ビジネスランチ
久しぶりに平日の12時から13時まで、昼休憩を取ることになった
そんなの当たり前やないかいと思うかもしれないが、普段は自分で好きな時に昼飯を食べている
その日は仕事の都合で、一般社会におけるスタンダードな時間にランチを食べることになった
ビジネス街で、サラリーマンやOLの方々がどんどんビルから流れてくる
なんだかドラマの最初のワンシーンみたいだ
あまり来ない街だ
せっかくならうまいのを食いたい
検索をかけると良さげな店があった
地図アプリを見ながら進んでいくと、行列ができている
10人ほどは順番待ちをしている
昼休憩は1時間である
食べるだけではなく、行って、戻ってくるのを1時間以内に収めるということだ
そこはとんかつ店だった
回転率は微妙なところだ
850円という札がかかっているサンプルのカツは、ほのかに茶色で、もう美味しんだから!もう美味しいんだよ、もう、もう・・・とおれを怪しげ誘っている
食いたい
しかし、行列が進まない
食いたい
進まない
食いたい食いたい
進まない進まない進まない
食いたい食いたい食いたい食いたい
進まない進まない進まない進まない進まない進まない
進まない×100
疑問が湧き上がる
みんな並んでるけど、時間あるん?
揚げ物らて、出てくるまで時間かかるて、先客がいつ食べ終わるか分からんのやて、すごくよく噛む人で100回くらいモグモグするかもしれんて、そしたら、順番が来る前に昼休み終わってしまうて、終わる前になんか食べなきゃとコンビニ駆け込むもおにぎりが売り切れていて、苦手な納豆巻きしか残ってなく、幕の内弁当でもいいかとレジに向かい公園のベンチに座ろうとしたら、太めなのだが妙に動きの速いおっちゃんに席を奪われ、立ちながら幕の内弁当食べるのシュールだがね、どうする?どうするがね!!
そんな展開は避けたい
とんかつ店を後にする
しくしく
しくしく
ビジネス街にあまり縁がなかったから知らなかったが、どこも混雑している
いつもはランチの時間帯をずらしていたから気づかなかった
立ち食いそばなら提供が早いなと近づくと、店内は戦後闇市のように人で溢れかえっていた
春菊天が舞っていてもおかしくないテンションであった
なんてこった
昼休みはもう30分くらいしか残っていないではなかろうか
ピンチ!
このままでは、立ち食い幕の内弁当になってしまう
料理ジャンルも看板も気にせず、店内の様子を次から次に見ていく
とにかく空いてるところに入るしかあるまい
客が1人しかいない中華料理店を見つける
さあ、入るのだ
ん?どうした!おれ!
入るのだ!
一番繁盛するはずのランチタイムに、客が1人だけの店に踏み込む覚悟はできてんだろうな
えっ?
そりゃそうだろうよ、空いているということはそれなりの理由があるんだよ、すげえ辛いとか、店主がスパルタで残すと説教するとか、謎のダンサーが現れチャージが加算されるとか、レジ係のおばちゃんがお隣よろしい?と言っておれの餃子をつまみ食いするとか、濃い味の方が美味しいじゃんと言って醤油をドボドボ足すとかだよ、そうなったらどうすんだよ
うがっ
まっ、そのへんのリスクを負っても構わないというなら入るといいさ
うがうがっ
しかし、もう時間はないのだ、おばちゃんが1個くらい餃子をつまみ食いしてもしょうがあるまい
ニラレバ定食を注文する
5分ほどで運ばれてくる
食す
会計を済ませる
なんとか間に合いそうだ
味はぼんやりしていた
左折するのか右折するのか迷っているような味であった
戻るときに、再び、とんかつ店の前を通り過ぎる
店内をチラ見すると、空席が目に入った
空いてんじゃねーか!
回転早いんじゃねーか!!
食えたじゃねーか!!!
ビジネスランチ、並ぶのは世の常
その様に怯まず、まずは並んでみるべし