おっさんは全力疾走できない

おれは年を取っても走れない男にはならない

運動会のリレーがあったとしたら、アンカーは無理でも、1人か2人は追い抜き、順位を上げて次のランナーバトンを渡すのだ

そんなおっさんにおれはなりたい

信号機の歩行者マークが点滅している

ふっ

急ぐことはあるまい、次の信号まで待てばいいではないか
それが大人のたしなみというものだ

おっさんとして油が乗り切っている今、すっかり走れなくなった

若い頃に立てた誓いは、おっさんの油のなかに溶けてしまった

筋力が落ちたというより、膝や腰にくるのだ

休日に、近所の川沿いの道路で、ちょっと走っちゃおうかな、てへ、おっさんだけどてへてへ!とダッシュを試ると、ペキ!と何やら嫌な音が走った

自分は走れなかったが、痛みは走った

足首と膝のあたりが痛い

年齢を重ねても、信号が変わるぜーっ!と横断歩道を駆け抜け、電車の乗り換えドアが閉まる前に体を滑り込ませ、風に流されるハンカチを追って拾い、落ちましたよお嬢さんと手渡す

そうなるはずであった

柿の木を小学生がつついて取ろうとしたら、こりゃー!何しとるーっ!と怒りながら笑いながら追いかけるジジイになるはずであった

走れなくなって気づいた

おっさんは歩いてる方がちょうどいい

100メートル走の陸上選手のように、腕を前後に激しく動かし、ストライドで迫ってくるおっさんがいたら、めちゃ怖いて!

外見に合った動きというものがあるのだ