気がつくと今日食べる予定のない山芋をカゴに入れている
安かったからだ
値段のわりにデカイからだ
色ツヤが良いからだ
しかしだね、きみ、その山芋を今日食べるかね?
食べないよね、今日のおかずはもう買ってある
明日から仕事だろう?
昼飯は外食だ
仕事終わって帰宅して、山芋を擦るかね?
擦らないだろう、面倒くさがって
靴下脱いだら何もする気が起きないだろう
そうなると、食べるのは、平日ではなく次の休みの土日になる
一週間後だね
鮮度は失われ、紫に変色していて、食感も落ちる
なんで俺は先週の日曜日に山芋を買ってしまったんだろうと、煩悶することになる
今、店先に並んでいる山芋を選べたらどんなに幸せかと
さあ、カゴから店頭に戻しなさい
大丈夫だ
来週になっても山芋は絶滅しない
味が急変して、激辛になることもない
品種改良されてアスパラ並みに小さくなることもない
放ちたまえ
山芋を自由にするのだ
新鮮なうちに誰かの胃袋に入るように
さあ、早く
買いすぎを防ぐには結構、己への説得が必要なのだ