めっちゃイケメン!しかし、

吉祥寺から井の頭線に乗った

正面の席にめっちゃイケメンが座った

年の頃は、30代半ばで、シワひとつないスーツを隙なく着こなしている
家にはチリひとつ転がっていないようだ

髪型も決まっているし、目鼻立ちもスッキリしており、清潔感に溢れている

おっさんのおれから見ても、こりゃモテるなと思う

案の定、左手の薬指には指輪がはめられていた

「俊夫さん、今夜一緒に飲みに行かない?」

「ダメよ!俊夫さんは私とお好み焼きに行くんだから!お好み焼きに行って、2人でジュージューしちゃうんだから!」

「邪魔しないでよ!B美!」

「何よ!A美!』

「俊夫さんは私ともつ鍋のお店に行くの!もう2人で煮込まれちゃうんだから!」

「私と行くの!」

「いいえ!わ・た・し!」

という激しいバトルを制して、A美がイケメンの俊夫さんと結婚したであろうことは想像に難くない

なるほどと正面を見つめていると、外気を吸うためにマスクを俊夫さんがふと外した

!!

何ということだ

髭ボーボーではないか!

整えられたオシャレ髭ではなく、無造作に伸ばされたロビンソンクルーソーであった

コロナ禍で、社内外でもほとんどマスクをするご時世だ

マスクを外すと言えば、飲食のときくらいかもしれない

他人の目に触れることはほとんどないんだから、髭剃らなくてもいいや
その分、寝てられるし

イケメンの俊夫さんがそう思ったとしても不思議はない

しかし、ロビンソンクルーソーが露わになると、イケメン度が急落する

果汁100%が5%、もしくは無果汁になってしまったようだ

口元のイメージって、すげえ大事なんだな

イケメン度はがっつり下がったが、好感度は上がった

そんだけカッコいいんだ、口元をだらしなくしてバランス取ろうぜ

「髭? 剃ってないよ、いいじゃん別に、どうせマスクで見えないんだから。A美もあんまりうるさいこと言うなよ〜 行ってきま〜す」

そんな生活感が好きだ