乗り過ごす

よく乗り過ごす

電車で本を読んでいるときが一番危ない

ページを開き、その世界に身を委ねシンクロすると、周りの景色が吹き飛んでしまう

顔を上げ、ああもうこんなところまで来たのか、到着まであとちょっとあるな、よしよし、まだ読める

再び、文字を追い始める

気がつくと、馴染みのない景色が窓の外に広がっている

あれっ

目的地からだいぶ進んでいる

とりあえず次の駅で降りて、逆方向の電車に乗り換える

本を読んではならじ

また乗り過ごすでよ

しかし、本の魅力に抗えず、またしても文字を追いかけはじめる

ちょっとだけ

現在地を確認しながら、本を読んでいく

確認して読む

確認して読む

読む読む

確認する

読む読む読む

読む読む読む読む

あらっ!

通り過ぎとる!!

あれだけ気を配っていたのに

俺はピンボールか!

レバーで弾かれるように右に左に振られとるって!

以前、母親が大学のため上京した時に、一向に東中野に着かなかったのよね、と話していたことがあった

総武線の各駅停車という存在を知らず、中央線の快速電車に乗り、何回チャンレンジしても、東中野を全速力で駆け抜くていく

おっかしいなあ〜と思いながら、かなり往復したらしい

もしや血筋では!?

右往左往して、駅にたどり着かない血筋

親子共々、それでは困る

学生の頃、やはり本を読んでいたら、乗り過ごしたことがあった

夜遅い池袋からの下り電車で、埼玉の友達のところに泊まりに行く予定だった

駅に降り立ち、上り方面を調べると、最終電車はすでに終わっていた

目的地まで3駅ほど

郊外の1駅は距離が長い

月に照らされた田んぼの中をひたすら歩いていった記憶がある

まっすぐに辿りつかないのもええかと、この頃では諦観している